【巡音ルカ】 地雷原夜道 【オリジナル】
はしがき
id:ja_bra_af_cuさんの真似っこでVOCALOID楽曲のレビューをしてみる。
ついでにタグも真似する。
実際楽曲レビューじみたものはTwitterでしょっちゅうしているのだけど、どうしても流れて行ってしまい、自分の記憶にも残らない。今回は色々と考えたことがあるので一度ちゃんとまとめておこうと思う。
レビュー手法については色々と思うところや言い訳もあるのだが、とりあえずは感想をぶちまけてみることにする。
楽曲紹介
本来なら詳しくはニコニコ大百科をどうぞとするところだったのだが、現時点でこの曲の記事はおろか、作者のドンガリンゴPの記事すら存在しないのでここで軽く紹介しておく。
2011年9月29日に投稿され、かなりの勢いで再生数を伸ばしている。週刊VOCALOIDランキング #209(2011/9/26〜10/3)でも8位をとるほどだ。自分の場合は毎時再生数ランキング(総合)で発見したくらいなので、相当な人気動画といえる。作者のドンガリンゴPは台湾人の翻訳家だそうで、「台湾からの刺客」だなんてタグがついてる。過去の動画からもわかるが、結構実験的な楽曲を作る人だ。
歌詞の内容は、ざっと乱暴に説明すると「主人公(ルカ)がコンビニに行く夜道で色んなものを踏んづけ続ける体験をする」というもので、コミカルで不気味なPVと合わせて非常に中毒性の高い作品となっている。サウンドは「プログレ」タグがついてる通りプログレっぽく、また「FFっぽい」というコメントが多い。ドンガリンゴPのブログによると、色々と「○○っぽい」と言われるそうだ。
かくいう私も「ものすごく筋肉少女帯っぽい」と感じたのでこのレビューを書いている次第である。
プログレっぽさについて
この曲は、楽曲全体として筋肉少女帯っぽい。歌詞は大槻ケンヂが乗り移ったかのようだし、サウンドも特にキーボードが三柴理を彷彿とさせる。
サウンドに関しては確かにFFっぽい*1。FFっぽさを演出しているのはオルガンの音使いとストリングスの運用の仕方である。
ただオルガンのテクニカルな部分やピアノサウンドに関しては、先ほど述べたように、ものすごく三柴理を感じる。また、効果音的なシンセサイザーの音には筋肉少女帯の色んな楽曲で使われる「電波的」な用法が垣間見える。
で、全体的にいうとプログレっぽいのだが、本人は無意識のようである。
ただし、
Q:男声で歌うのならどんな声がいいですか?
A:大槻ケンヂさんのような声をイメージしてた。
とあるので、確実に大槻ケンヂは意識しているようだ。また、FF6のゾゾの町とFF9の最後の闘いを混ぜてみた - ニコニコ動画のような動画からもわかるように、かなりFF好きのようだからFFっぽさも確かにバックグラウンドとしてあるのだろう。
ファンならご存知のことだろうが、筋肉少女帯*2も、FFの作曲者の植松伸夫もEL&P*3影響を受けている。実際、両者のサウンドには随所にELPっぽさがにじみ出ているわけだが、その影響下にあるこの曲も存分にELP→プログレなのである。
憑依したオーケンと巡音ルカの調教
何度もいうが、歌詞が大槻っぽい。本人は声のイメージとして語っているが、最初聴いたとき大槻そのものが憑依でもしたのかと思ったくらいである。どのあたりがそうなのか、感じたことを箇条書きにする。
- 全体のストーリー展開、状況設定、発想がそもそも
- 歌詞やPVのネタなどにある内面描写と、外の世界の不条理感
- ○○かよ、○○かよ のような言い回し
- 随所にある厨二病的語彙
- 「ここは自然の敵の悪の人のアジトなんだぞ」
- 音節の強引な区切り、合成の仕方
- 唐突なスケール*4変換(原子、クォーク〜地球)
- 本当に大槻が歌ったらライブで間違えそう(重要)
自分は大槻の書く歌詞のこういう要素が大好物であり、絶賛せざるをえない。もちろん、大槻のものとはまた別のセンスも垣間見えるわけで、そこがドンガリンゴPオリジナルとしての良さになっているのだけど。
さて、作者の持っている音源の都合か、しっくりくる男声がなかったか、歌には巡音ルカが起用されている。ルカさん曰く「いまいち感情移入出来ない」とのことだが、それも仕方ない。大槻のような叙情的な歌い方はVOCALOIDをはじめとした歌声合成では最も表現しづらい部類のものである。
しかし、ここで巡音ルカが起用したことを賞賛したい。Twitterなどでたまに主張しているのだが、巡音ルカの魅力は表現の幅の広さであり、もっといえば調教による振れ幅の大きさだと思っている。クールなお姉さん声にも出来れば、ロリ系の声にも出来、ものすごく鏡音レンっぽい声にも出来る。
今回の調教は基本的には、ナレーション的な部分は無感情に+歌い上げる部分は少し可愛らしくという感じに聞こえた。無感情といってもベタ打ちではない。ポルタメント表現など多用されているが、全て、無感情(+ちょっとした起伏)に聞こえるよう調整されているだけである。歌詞が非常に内面描写的なだけ、いっそこのように無感情に歌ったほうが良く伝わってくる(イラストもあるしね)。後者に関しては、多分大槻であればうざったらしく「イイ声っぽく」歌い上げるようなイメージだろうか。
あと、ルカによる黒猫の「にゃぅ」とか、あとはテニスボールの「コケなくてよかったな」というセリフ。これは明らかにドルバッキー声(あるいはボースカ声)を想起してしまう。「コケなくてよかったな」の調教は、所謂ロリルカ・タコルカ系のものであるが、これはまるっきり大槻が一人二役*5している時のアレである(参考動画: (曲) 特撮 - 文豪ボースカ)
こういったシンプルな表現の幅があるのが巡音ルカという音源だったりする。
終わりに
以上、過剰に大槻ケンヂと被せて論じてしまった。他アーティストの楽曲と直接比較して論じるというのは様々な問題があるのだが、敢えてやってみた面もある。かなり突っ込んだ見方をしてしまった感があるので、異論や反論は広く受け付ける。
最後に、この曲を聴いて真っ先に想起した楽曲を2つほど紹介して終わりにしたい。
他にも(特に歌詞が)似た曲はあるように思うのだが、パっと思いつかなかった。