音源ライブラリを特集しよう

きっかけ

歌声合成の音源ライブラリと関連動画を紹介・解説するような特集を始めたい。

というのも。

ボカロクリティーク界隈で各論・作品論がすくないよねー

http://d.hatena.ne.jp/ja_bra_af_cu/20110917/1316238936

という話題からid:ja_bra_af_cu氏が始め、私が知る限りではid:sakstyle氏が続き*1、私も真似してやってみた*2作品レビュー。これらの試みは楽曲という切り口からボカロ文化を、あるいは自分自身の音楽を見つめ直す良い機会になっている。布教としても、批評の材料としても*3、楽曲について語る人が増えたらいいなと思う。

このような各論的紹介ブログ記事として、読んでみたいジャンルが他にもあった。

ひとつがアーティスト論、もうひとつが音源ライブラリ論。
まあどちらも雑誌等で行われているかもしれないが、先の作品レビューなんかと同じで、主観的な意見や紹介文を読みたいのだ。酷く偏っていてもいい。むしろ偏った記事が。

歌声合成の音源ライブラリ

昨今の歌声合成界隈においては音源ライブラリ(の集合)=キャラクターという紐付けが強いので、音源ライブラリ紹介=キャラクター紹介といっても良いだろう。音源ライブラリの個性が独立にこんなにも広く扱われるというのは、ボカロ文化特有の現象だ。普通なら「あの会社のあのソフト音源シリーズは云々」なんて話は音楽制作者同士でしか出てこないが、歌声合成の音源ライブラリの話題は、パッケージの柔軟性とキャラ付けによって非常に間口が広い。多分、キャラ付けの無い「ボーカルシンセ」としてでは起きなかった現象だろうと思う。

歌声合成の音源ライブラリは、VOCALOID、非VOCALOIDを含めると何千とあるといわれる(一番多いのはUTAU向けだろう)。ライブラリに紐づくキャラクターも同じオーダーで存在すると思われる。こうまでなると、世の中、知らない音源のほうが多い。仮に名前は知っていても曲は聴いたことがないとか、特徴はあまり知らないとかいうものも多い。

このような状況だと、作品レビューと同じくらい、音源紹介をすることに意味があるのではないか、と考えた。

惜しまれるマイナー性

以前、ある人に「UTAUの楽曲を聴いてみたいんだけど、どの音源(キャラ)の曲から聴いていけばいいのか。探してとりあえず聴いてみてもその音源がどういうものかわからないし、話題も共有しづらいので、ハードルが高い」というようなことを言われて答えに窮したことがある。その時は「音源に依存して曲を探すのは諦めてはどうか。自由に楽曲単独で楽しめばいいよ。」という返答をしたのだが、どうもそれは実感的な解答ではないように思える。それがずっと気になっていた。

私は「UTAU」タグ検索から網羅的に楽曲を探すことも多い。なので上記のような返答が出てきたのだが、やはり、お気に入りの音源ライブラリやキャラクターというがあって、それはそれで別途特別に追っていたりする。特定のアーティストを追いかけるのと同じ感覚である。と、すればやはり音源に依存して楽曲を楽しんでいるわけで、先ほどの自分の返答とは矛盾してしまう。

楽曲の楽しみ方に音源依存性(キャラ依存性*4)が強いボカロ文化。そこで問題になるのは、音源の知名度だ。知名度、認知度の低い音源の話題はどうしてもマニアックになってしまい、情報流通の輪が閉じがちだ。初音ミクめぐっぽいどのようなVOCALOID音源は、全体として自己発展的に自然と情報が流通するレベルに達しており、放っておいても情報が耳に入ってくるようになってきた。最近はUTAUやSinsyなどの非VOCALOID音源も広く知られるようになってきた*5が、非VOCALOID音源の中には「知る人ぞ知る音源」や「そこそこ狭い界隈でのみ人気の音源」がまだまだ沢山あるのだ。

「いい曲だと思うんだけど、あまり伸びない…」という悩みがUTAU界隈ではよくある。聴き手の母数の問題だろう、音源の知名度が低いほどそうなりやすい*6。経験的には、VOCALOIDとUTAUでは再生数がおよそ1桁違う。そして音源の数は2桁違う。多くない聴き手が更に分散している状態なのだ。

結論

こういうときは布教活動だ。と私の短絡的思考は結論づけた。

UTAU界隈でお互いの好きな楽曲やライブラリを語り合うためにも、UTAUに興味はあるけどよくわからない人を引き入れる為にも、はたまたUTAUってなに?って人を引きずり込むためにも、さあみんな好きなもの語りをしようよ!という帰結である。

楽曲レビューと同じで、任意の視点からで良いと思う。例えば私は、音源ライブラリ紹介と銘打つくせに、音源の調教をする制作者的視点にたったレビューは出来ない。知らない楽曲もたくさんあるし、ほとんど視聴しない動画ジャンルもたくさんある。「ここすき」レベルでぐだぐだ何か書いてみればいいんじゃないの、という気軽なノリでやる。細かいことは後で考える。

というわけで言い出しっぺとしてやるべきことはやらねばならない。…実はもう1つ特集記事を8割方書いてあるのだけど、時間的制約と、この記事を前もって投下しておきたいという理由から、保留してある。明日あたりにポストしたい。

*1:【初音ミク】 Just route!! 【オリジナル曲】/【初音ミク】Animistic Prayer【オリジナル】 - logical cypher scape2

*2:【巡音ルカ】 地雷原夜道 【オリジナル】 - 煩悩の反応学

*3:まぁレビュー即ち批評という見方も出来るかもしれないが

*4:ここまで書いて気づいたけど、この記事では「キャラ」と「キャラクター」はなんら区別していない。適当に使っている。

*5:重音テトはDIVA 2ndにモジュールが追加されたし、雑誌でオリジナル音源が作られるようにもなったし、企業が広報で音源を作ったり

*6:まぁ根本的にVOCALOIDとUTAUには色々と大きな違いはあるのだが

2011年9月のマイランク状況

 もう10月も半ばですのでさっさとまとめてしまいます(サボりすぎ)

 nFinderのマイランク機能を使って個人的月間再生ランキングを集計し、結果を晒すことであわよくば布教しようという趣旨の記事です。動画ロードの関係で多重再生になってしまったものは手動ではずしています。

 今回は月の後半minecraftにドはまりしてしまった影響で全体的に再生数少な目w

  • 1位:【VY1】サイバーサンダーサイダー 【オリジナル曲】 (再生数 13)

   

  現時点で20万再生を超えてるのでもはや説明するまでもないかも。
  VY1魅力をダイレクトに表現している名曲だと思う。オケもPVも秀逸です。
  この曲はVY1の「非(or亜)人間的かつ何者でもない」という特徴を多分に引き出しており
  人間がどう歌っても原曲の魅力に到達しえないのではないか*1と思っています。

  • 2位:【UTAU連続音】 The Beast. 【TATARI】 (再生数 8)

   


  TATARIという海外製UTAU音源による、スペクタクルPの「The Beast.」カバー。
  もともと原曲が好きなんですが、その上で、個性的な声質に心底驚愕、感動した。
  個人的に歌声合成の未来を感じた一作です。テーマとのマッチ感がすばらしい。
  歌ってみた動画や他の音源カバーが多数ありますが、他にはない魅力があります。
  ちなみに現時点で再生数76…もうちょっと伸びないかな*2
  
  

  • 3位:THERION-Wine Of Aluqah(LIVE)  (再生数 5)

   

  何度目かのTherionマイブームがきてしまい、かなり魅入ってしまいました。
  Therionは妖しさ爆発な楽曲が特徴のスウェーデンのシンフォニックメタルバンドです。
  今はVocalの多さも特徴ですね。このライブではVocalが4人いたりします。
  この動画の必見事項は、踊り子のねーちゃんです。美しい。妖艶とはこのことだ。
  …ちょっとこれでニコマス動画とか作りたくなったくらい

   

  3位に引き続いてTherion動画。同じライブです。おそらく一番有名な曲。
  昔CDで聞いたときはライブ再現無理なんだろうなぁと思ってたんですが、そんなことなかった。
  Christofer(Gt.)の動きとボーカルの並び方がやたらイカしてます。
  ただ、そこを観客にやらせるのは無茶だと思うんだよw(動画3分くらい〜)

  • 5位:オリジナル曲・月翅 【VY1】 (再生数 4)

   

  VY1関連で動画を見直していて、そういえばこの曲も好きだったなぁと聞き込み。
  殿堂入りしたんですね、おめでとうございます。
  VY1というか、VOCALOIDは全体的にこの手の民族音楽的な発声と相性がよいのですが、
  それを端的に表している曲だと思います。



 ピックアップ

    • Dalriada - (Hazateres)

   

  フォークメタル普及用。Dalriadaというハンガリーのバンドです。
  ライブ動画ですが非常に聴きやすく、かつ、
  このジャンルの魅力を表現した典型的な曲なので是非聞いてみてください。
  前半の素朴に壮大な感じ、後半にかけての盛り上がり(特に3分以降を!)などは
  ある種この手の音楽でよく見られる手法ですねw

  「フォークメタル」って特定の様式を指してるわけではないので
  説明が非常にしづらいのですが、例えばこういうのも一例ということで。

*1:歌ってみたには歌ってみたの魅力があるのですが、歌ってみたの個性の出し方とは心底相性が悪い

*2:しかもそのうち15ほどが私の再生という。知る人ぞ知るってレベルじゃねーぞ

【巡音ルカ】 地雷原夜道 【オリジナル】

はしがき

id:ja_bra_af_cuさんの真似っこでVOCALOID楽曲のレビューをしてみる。
ついでにタグも真似する。

実際楽曲レビューじみたものはTwitterでしょっちゅうしているのだけど、どうしても流れて行ってしまい、自分の記憶にも残らない。今回は色々と考えたことがあるので一度ちゃんとまとめておこうと思う。

レビュー手法については色々と思うところや言い訳もあるのだが、とりあえずは感想をぶちまけてみることにする。

楽曲紹介

本来なら詳しくはニコニコ大百科をどうぞとするところだったのだが、現時点でこの曲の記事はおろか、作者のドンガリンゴPの記事すら存在しないのでここで軽く紹介しておく。

2011年9月29日に投稿され、かなりの勢いで再生数を伸ばしている。週刊VOCALOIDランキング #209(2011/9/26〜10/3)でも8位をとるほどだ。自分の場合は毎時再生数ランキング(総合)で発見したくらいなので、相当な人気動画といえる。作者のドンガリンゴPは台湾人の翻訳家だそうで、「台湾からの刺客」だなんてタグがついてる。過去の動画からもわかるが、結構実験的な楽曲を作る人だ。

歌詞の内容は、ざっと乱暴に説明すると「主人公(ルカ)がコンビニに行く夜道で色んなものを踏んづけ続ける体験をする」というもので、コミカルで不気味なPVと合わせて非常に中毒性の高い作品となっている。サウンドは「プログレ」タグがついてる通りプログレっぽく、また「FFっぽい」というコメントが多い。ドンガリンゴPのブログによると、色々と「○○っぽい」と言われるそうだ。

かくいう私も「ものすごく筋肉少女帯っぽい」と感じたのでこのレビューを書いている次第である。

プログレっぽさについて

この曲は、楽曲全体として筋肉少女帯っぽい。歌詞は大槻ケンヂが乗り移ったかのようだし、サウンドも特にキーボードが三柴理を彷彿とさせる。

サウンドに関しては確かにFFっぽい*1。FFっぽさを演出しているのはオルガンの音使いとストリングスの運用の仕方である。

ただオルガンのテクニカルな部分やピアノサウンドに関しては、先ほど述べたように、ものすごく三柴理を感じる。また、効果音的なシンセサイザーの音には筋肉少女帯の色んな楽曲で使われる「電波的」な用法が垣間見える。

で、全体的にいうとプログレっぽいのだが、本人は無意識のようである。
ただし、

Q:男声で歌うのならどんな声がいいですか?
A:大槻ケンヂさんのような声をイメージしてた。

とあるので、確実に大槻ケンヂは意識しているようだ。また、FF6のゾゾの町とFF9の最後の闘いを混ぜてみた - ニコニコ動画のような動画からもわかるように、かなりFF好きのようだからFFっぽさも確かにバックグラウンドとしてあるのだろう。

ファンならご存知のことだろうが、筋肉少女帯*2も、FFの作曲者の植松伸夫EL&P*3影響を受けている。実際、両者のサウンドには随所にELPっぽさがにじみ出ているわけだが、その影響下にあるこの曲も存分にELPプログレなのである。

憑依したオーケン巡音ルカの調教

何度もいうが、歌詞が大槻っぽい。本人は声のイメージとして語っているが、最初聴いたとき大槻そのものが憑依でもしたのかと思ったくらいである。どのあたりがそうなのか、感じたことを箇条書きにする。

  • 全体のストーリー展開、状況設定、発想がそもそも
  • 歌詞やPVのネタなどにある内面描写と、外の世界の不条理感
  • ○○かよ、○○かよ のような言い回し
  • 随所にある厨二病的語彙
  • 「ここは自然の敵の悪の人のアジトなんだぞ」
  • 音節の強引な区切り、合成の仕方
  • 唐突なスケール*4変換(原子、クォーク〜地球)
  • 本当に大槻が歌ったらライブで間違えそう(重要)

自分は大槻の書く歌詞のこういう要素が大好物であり、絶賛せざるをえない。もちろん、大槻のものとはまた別のセンスも垣間見えるわけで、そこがドンガリンゴPオリジナルとしての良さになっているのだけど。


さて、作者の持っている音源の都合か、しっくりくる男声がなかったか、歌には巡音ルカが起用されている。ルカさん曰く「いまいち感情移入出来ない」とのことだが、それも仕方ない。大槻のような叙情的な歌い方はVOCALOIDをはじめとした歌声合成では最も表現しづらい部類のものである。

しかし、ここで巡音ルカが起用したことを賞賛したい。Twitterなどでたまに主張しているのだが、巡音ルカの魅力は表現の幅の広さであり、もっといえば調教による振れ幅の大きさだと思っている。クールなお姉さん声にも出来れば、ロリ系の声にも出来、ものすごく鏡音レンっぽい声にも出来る。

今回の調教は基本的には、ナレーション的な部分は無感情に+歌い上げる部分は少し可愛らしくという感じに聞こえた。無感情といってもベタ打ちではない。ポルタメント表現など多用されているが、全て、無感情(+ちょっとした起伏)に聞こえるよう調整されているだけである。歌詞が非常に内面描写的なだけ、いっそこのように無感情に歌ったほうが良く伝わってくる(イラストもあるしね)。後者に関しては、多分大槻であればうざったらしく「イイ声っぽく」歌い上げるようなイメージだろうか。

あと、ルカによる黒猫の「にゃぅ」とか、あとはテニスボールの「コケなくてよかったな」というセリフ。これは明らかにドルバッキー声(あるいはボースカ声)を想起してしまう。「コケなくてよかったな」の調教は、所謂ロリルカ・タコルカ系のものであるが、これはまるっきり大槻が一人二役*5している時のアレである(参考動画: (曲) 特撮 - 文豪ボースカ

こういったシンプルな表現の幅があるのが巡音ルカという音源だったりする。

終わりに

以上、過剰に大槻ケンヂと被せて論じてしまった。他アーティストの楽曲と直接比較して論じるというのは様々な問題があるのだが、敢えてやってみた面もある。かなり突っ込んだ見方をしてしまった感があるので、異論や反論は広く受け付ける。

最後に、この曲を聴いて真っ先に想起した楽曲を2つほど紹介して終わりにしたい。

他にも(特に歌詞が)似た曲はあるように思うのだが、パっと思いつかなかった。

*1:特にオルガンがFF7っぽい

*2:特にボーカルの大槻ケンヂ、ベースの内田雄一郎、キーボードの三柴理

*3:言わずと知れたプログレ四天王の一柱である

*4:紛らわしいが音楽における「スケール」のことではない

*5:出来れば「ドルバッキー」とか「ボースカ」でライブ動画を検索してみてほしいw

Minecr@ft動画紹介 〜穴を掘るアイドル達〜

最近すっかりMinecraftにはまっていました。おかげ様でTweetもブログ更新も激減してしまったので…ブログの肥やしにしとくことにします。

そもそもminecraftとは何か?ということについては
 Minecraftとは (マインクラフトとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
あたりでもご参照ください。
基本的には名前の通り「掘っても掘っても砂ばかり…」を地でいきます。

まぁ昨今プレイ動画も伸びてきているゲームですので、ずっと気になってはいたのですが、「ものづくりゲー」ということで避けていました。シムシティとかあまり長続きしないタイプなので(嫌いではないのだけど)。が、後で紹介する「萩原雪歩のマインクラフト」を見て、「冒険要素」がかなりあることに気づきました。実際にその世界で生活しているという実感がある分、ダンジョン探索や宵闇なんかはそこらのホラーゲームよりも怖かったりします。このあたりはMMORPG的ですね。ただのものづくりゲーとして片付けてしまうには勿体ない色々な要素が詰まった面白いゲームです。

そんなわけで
 「アイマス動画を見て僕と一緒に穴掘り生活しようよ!」
という動画紹介エントリを書いてみんとす。4シリーズほど紹介。

ゲームをやったことがない・やる気がない人でも、純粋に架空戦記モノとしてオススメします。

萩原雪歩のマインクラフト

シリーズのマイリスト

私がマイクラ世界にハマるきっかけとなったシリーズ。
小鳥さんとPに誘われマイクラをプレイし始める雪歩。雪歩とこのゲームの相性の良さは説明するまでもないですが、本当にこの世界の雪歩は楽しそう。マインクラフトの面白さもさることながら、雪歩の良さが存分に表現されている素晴らしいシリーズです。あとドット絵が可愛い。

BGMとしてファルコム系の楽曲が多用されているのも個人的にグッド。サガフロ2の曲が使われた回もありました。

わかりやすい説明が入るのでゲームを知らない人でも楽しめます。雪歩と一緒に色々と発見・学習していく感覚。テクスチャは基本的にデフォルトで、盛り上げるために一部のテクスチャが変えられてたり、ちょっとしたMODが導入されていたり(スコップの攻撃力が上がってるとかw)

やよいのマインクラフト

シリーズのマイリスト

通称「やよクラ」。
他のシリーズはアイドル達のゲームプレイ動画なのですが、これだけ「やよいが無人島に行って自給自足生活を送る、という番組」というものです。リアルかよ!! ということで「素手で石を掘るアイドル」とかコメントがつく始末。真曰く、
 「素手で木を割るのはアイドルなら出来て当たり前だよね☆」
…どんな世界だ。しかしやよいは逞しいなぁ。

BGMはGO MY WAYなど、歌ものを多用。「ワンダーランドなネザーランド」タグはこのシリーズ発祥か。あと毎回ある、匠*1ネタのOPが秀逸です。

説明があまり入らず、作業風景が倍速でほぼノーカットだったりするので、ゲームを知らない人はちょっと見づらいかもしれません。テクスチャはデフォルトですが、盛り上げのために色々とMODを導入したりもしている、なかなかの実験作です。犬(狼)に名前着けられるとか、イルカに乗れる(乗れてないけど)とかいいよね。

舞さんの坑道採掘奮闘記

シリーズのマイリスト

通称「舞クラ」?
これまた小鳥さんにそそのかされて、舞さんがマイクラにはまりこんでしまうシリーズ。実際にプレイしてるのは姉歯Pなのに、なぜか舞さんらしい豪運な「引き」が特徴的。なぜだ。これがオーラってやつなのか。一応、プレイスタイルにロールプレイも入ってるようです。

特に面白いのが小鳥さんとの絡み。プレイしてるのは舞さんですが、小鳥さんがリモートで助言(?)をしたり、コントしたり。まぁほぼ同年代の二人ですが、この絡みがこんなに面白いとは…!あと、「そろそろ愛ちゃんが帰ってくるからご飯の支度しなくちゃ」みたいなネタも楽しい。

BGMはアトリエシリーズからが多いかな。テクスチャは解像度の高いものをつかっており綺麗ですが、デフォルト派の人は注意。小鳥さんがアドバイスするという形式もあり、説明の内容は豊富なのですが、文章量の多さに対して表示時間が短いのがちょっと辛いかも。

麗華のminecr@ft

シリーズのマイリスト

Minecr@ftシリーズでは一番後発。
今回の元凶は、りんちゃんです。りんちゃんとアルにそそのかされ、どっぷりマイクラにはまっていく麗華さん。半角さんもマインクラフターなようで、スカイプを通してたまにゲスト参加したり、と魔王エンジェル動画としても非常に楽しい。ゲームを始める前に上記の3シリーズの人気なんかをチェックするあたりが麗華さんらしい*2

まぁ舞さんもオーラがすごいですが、麗華さんも負けてません。なんでプレイキャラにどんぴしゃな展開が起こるかな、不思議だ*3。どちらかというと大規模な建造物を作るのが好きなようです。こういうのは中の人のプレイスタイルもあるのかもしれないけど、キャラクターの性格ともリンクするようで面白い。

BGMは聖剣伝説など懐かしいゲーム曲が多用されてます。テクスチャやMODもおそらく未導入で、かつ、説明もわかりやすくテンポも良いため、初めてマイクラ動画を見るのであればこのシリーズが一番おすすめかもしれません。そのかわり大幅カットなど多いですが。

まとめ

以上、どのシリーズも面白いので全部オススメなんですが、一番最初は雪歩か、麗華さんかのどちらかをオススメします。雪歩は全身全霊でマイクラを楽しむ感が出ててよいですし、麗華さんのは説明がわかりやすい。

ただ、動画を見て「マイクラやってみたい!」と思った人に一応、忠告しておきます。

今なら日本円で1600円くらいで買えるので、PCスペックさえあれば気軽にサクっと始められるのですが…、このゲームはものすごく時間を消費します。湯水のように時間を浪費します。小鳥さんと舞さんも「睡眠時間が〜〜」と嘆いていますが、本当に睡眠時間をザクザク削ってやるゲームです。気づいたら朝とかザラです。ま、それだけ面白いということなんですが。

シムシティなどにハマりやすい人はもちろん、ネトゲ(特にMMO)にハマりやすい人はご注意。さらにマルチプレイなんてやった日には…


まぁでも、マイクラ仲間が増えたらいいな。

*1:クリーパーという緑色のモンスターの通称。マインクラフトのマスコットとして大人気(?) なぜ匠と呼ばれるか…は省略。

*2:これをもって他のシリーズとリンクしているという妄想も出来たり

*3:もちろん、そうなるような面白い部分を選んで動画にしてるのだろうけど

非VOCALOIDのVOCALOID文化

 UTAUのカテゴリ問題を改めて考える - 煩悩の反応学の続き。

前回、UTAUがニコニコ動画でカテゴリ迷子になっている話から、VOCALOIDという用語の語義拡張の話まで概要を整理してみた。この問題は、単なる定義論ではなく*1、我々が歌声合成文化とどう向きあっていくべきかを考える端緒となる話題だと思っている。したがって、私がまずしたいのは整理整頓である。この手の議論は中身のない言い争いになってしまうことも少なくないが、その原因の多くは「前提条件の不一致」「相互認識の不足」だったりする*2。クリエイター達が状況に一石を投じようとしている今、なるべくそのような可能性を減じておきたい。

カテゴリ問題との区別

UTAUのカテゴリ問題は、あくまでニコニコ動画における「カテゴリタグ」の取り扱いにおける問題だ。それ以上の意味を孕んでいることは確かだが、VOCALOIDという用語をどう扱うべきかという問題と、UTAU関連動画をVOCALOIDタグで扱うべきかという問題は、レイヤが違うことを注意しておきたい。後者はニコニコ動画というサービスがどうあるべきかという話が含まれてくる*3

また、更に細かい点を言えば、歌声合成文化全体の話と、音楽の話も区別する必要があるかもしれない。例えば、デスおはぎさんらの試みは「UTAUを用いた楽曲の動画を」というものであることは今一度確認しておこうと思う。もはや歌声合成文化(ボカロ文化)は音楽だけでは語れないのだから。

ここでは、まずはVOCALOIDという用語について掘り下げていく。

VOCALOID」の多義性

現状でVOCALOIDという用語の意味として以下が考えられる。

  1. ヤマハが開発した音声合成技術、及びその応用製品の総称*4
  2. 応用製品に設定されたキャラクター
  3. 上記の技術またはキャラクターに関する文化(広義すぎるので「VOCALOID文化」など)

1〜2は問題あるまい。問題は3である。この文化ないし文化圏というものが、何をどこまで包含し、そのうちどこまでを「VOCALOID」と呼んでよく、どこまでが「VOCALOIDタグ」でタグ付け可能なのか。
 
なおしつこいようだが、一般に、タグ付け可能であることとニコニコ動画でタグをあてられるか否かは別の問題だ。しかしここでは比喩のため明確には区別しないので、以下の比喩で用いる「タグ」とはニコニコ動画のタグだと思っていただきたい。

タグ付け可能性

VOCALOID技術や製品を用いて作られた動画には1の意味でVOCALOID動画として分類できる。例えば、初音ミクをボーカル起用した楽曲の動画、鏡音リンに日常会話をさせた動画*5などである。

2の意味では例えば、GUMI*6猫村いろはがステージで踊る動画(音声は起用しない)みたいなものがあたる。この文脈も割と確立されていると思われるが、それでも二次設定や派生キャラはどうするのかという問題がある。私は少なくとも派生キャラは3の文脈で語るべきだと思っている。

そして問題の3だが、まず派生キャラについて。VOCALOID派生キャラとは、VOCALOIDキャラクターを元に派生したキャラクターを指す。例えば、はちゅねミク弱音ハクなどであり、一般には彼らに関する動画にもVOCALOIDタグはつけられるようになっている。

ここで、重音テトは一般にはVOCALOID派生キャラとされるものの、VOCALOIDタグはつけられない。彼女をはじめとするVIPPALOID勢は特定のVOCALOIDキャラから直接派生したキャラでは無いが、VOCALOID製品と密接に関わった存在であるため、非VOCALOID勢の中でも派生キャラとして扱われやすい*7。しかし、彼らが非VOCALOIDの音源ライブラリと密接に結びついていることもあり、VOCALOIDタグがつけられることは非常に少ない。

また、初音ミクを3DCGにして踊らせる目的で作られたMMDVOCALOID文化を参考に構築されたUTAU界隈の歌声合成文化も、VOCALOID文化を端緒としている。これらをそのまま「VOCALOID」というタグでくくるべきではないが、少なくとも「VOCALOID文化」「ボカロ文化」といった場合このあたりの潮流も語られる対象となり得るだろう。

VOCALOIDのボカロ文化紹介

VOCALOIDのボカロ的文化を指してUTAU、UTAU文化と通称されることがあるが、必ずしもUTAU(第一義的にはツール名)と関係するわけではないので厳密ではない。しかし、非VOCALOIDも含めて「ボカロ文化」と呼ぶことを容認するならば、非UTAUも含めて「UTAU文化」と呼ぶことが容認されてもいいだろう。

また、桃音モモ、雪歌ユフ、春歌ナナのようなキャラクターを「UTAU」「UTAUキャラ」ということもあるが、これも細かく見ると同じような理由で適切ではない。しかしそれでは彼女らを総称する適切な用語が存在しないことになるので私は「UTAUキャラ」と呼ぶようにしている。音源ライブラリを指す場合も、UTAU専用でなくとも「UTAU音源」ということが多い。

このあたりの事情はVOCALOIDと異なるので確認しておこう。VOCALOIDでは製品=音源ライブラリ=キャラクターが成立する。そのため初音ミクは「VOCALOID」であるといえる(VOCALOIDという語感の良さもある)。しかし、雪歌ユフらのような「UTAUキャラ」はキャラクター=音源ライブラリという紐付きはあるのだが、VOCALOIDと違ってその音源ライブラリは、基本的に合成エンジンやエディタに縛られない。UTAU以外のツールでも歌声合成は可能だし、実際にそのような作品は存在する。ちなみに上記の例では、春歌ナナは「UTAU用音声ライブラリ」と銘打たれているが、雪歌ユフは音声ライブラリに対して「UTAU向けに創作したキャラクター」であったりする。このあたりの事情は音源ライブラリごとに色々と違うのだが、通常はあまり気にしなくてよいだろう*8

UTAUとVOCALOIDの違いで一番大きいのは「自分で音源ライブラリとキャラクターが創作できること」だろう。この点は、ボカロ文化でよく見られる二次設定や派生キャラ創作の楽しみを、一次創作レベルまで拡張したものとみなすことが出来る。実際、UTAU文化におけるキャラクターでの「遊び」方はVOCALOIDのそれと非常によく似ている。UTAU文化そのものがVOCALOID派生文化であることが良く現れていると思う(なお、派生とは拡張という意味だ)。

なお、UTAU界隈ばかりを紹介してきたが、他の代表的歌声合成ツールとしては例えばSinsyニコ百)がある。こちらは任意の音源ライブラリを使えるわけではないしキャラクターも作られていないが、歌声合成文化の中では重要な地位を確立してると思う。SinsyはUTAUと関係しない*9ので、UTAUタグもつけられず、Sinsyタグで探すことになる。こちらでもやはり「歌声合成」を総称するタグが欲しくなってくるわけである。

その他にも人力VOCALOIDと呼ばれるようになった音声切り貼り技術*10や、歌向けではないテキスト読み上げツールの音声を歌声化する技術*11なども非VOCALOIDの歌声合成文化として代表的だ。これらは明らかにVOCALOIDにインスピレーションを受けて発展を続けており、ボカロ文化を構成しているといえる。

歌声合成文化からボカロ文化へ

以上、VOCALOIDを端緒とした歌声合成文化が如何に広がりをもっているかということを確認してきた。音楽だけではなく、キャラクター文化や技術文化への広がりを持っており、もはや一つの側面だけでは語れないのが現状である。そういう意味ではもはや、私が好んで用いている「歌声合成文化」という通称ですら適切ではない。やはりこの文化圏の性格を象徴出来るのはVOCALOID、あるいはボカロという用語であり、「ボカロ文化」という語がますますしっくり感じられる。

このような現状を共通に踏まえた上で、ボカロ文化の議論をしていければと思う。


9/18 id:ja_bra_af_cuさんの呟きを受けて人力VOCALOIDなどの記述を追加してみました。脚注がたっぷり増えたw

*1:定義論はアプローチと時期が適切でさえあれば大切な議論である。物事の本質を”今"どう表現するのが適切かという。

*2:というかどのような議論でもコレが噛み合わない原因になるの言うまでもない。例えば、動画コメントですぐケンカが発生するのは、前提条件の確認と相互認識が不可能だからだ。

*3:タグ付け可能性と語義は表裏一体であり、厳密に区別して議論するのは難しい。しかし「ニコニコ動画」という文脈ではサービス方針、ビジネスの観点も加わる。そこは区別したい。

*4:VOCALOID - Wikipediaから引用

*5:トークロイドと呼ばれる。歌用であるVOCALOID製品を使って平文の会話を表現する。詳しくはトークロイドとは (トークロイドとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*6:MegpoidというVOCALOID製品のキャラクター。メグッポイドとは (メグッポイドとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*7:ちなみにVIPPALOID派生キャラもいるのだから、キャラクター文化というものは外からみればややこしいったらありゃしない

*8:こういうややこしい話をすると、また「UTAU文化」がよくわからないという感想を抱かれそうだが、ややこしいのはボカロ文化どこ見ても同じである。今回は一応「細かく考えるとこういう違いがあるよ」という意味で取り上げただけで、あまり気にしておよび腰にならないでほしい

*9:耳ロボPがUSTファイル(UTAU用の楽譜ファイルみたいなものでVOCALOIDでいうVSQ)→Sinsy用ファイルの変換ツールを作ったりもしているが http://freett.com/nwp8861/soft/utau2sinsy/index.html

*10:昔からある技術で、こう呼ばれるようになるまではMAD技術として取り扱われることが多かったと思う。VOCALOIDやUTAUのような技術と区別されるのは「ライブラリから合成するのでなく必要シーンに合わせて素材を選んで繋ぎ合わせる」という匠の技であり、非常に人間に近い発声まで実現されている。ちなみにUTAUは人力VOCALOID支援ツールとして開発されている

*11:要するにトークロイドやHANASUの逆

UTAUのカテゴリ問題を改めて考える

 UTAUオリジナル曲をVOCALOIDカテゴリとして投稿していこうという試みが行われるようだ。
  UTAUを「VOCALOID」カテで | デスおはぎのブログ
 詳しくは上記デスおはぎ氏のブログで、そしてボカロクリティークVol.01に寄稿された彼の論考にて述べられているので、興味のある方はどちらもご一読をおすすめする。
 この活動の背景には「ニコニコ動画におけるUTAUのカテゴリ問題」というものがある。UTAU楽曲はずっとカテゴリ迷子状態なのだ。この問題の議論が活発だったのは大体1年以上前の話で、最近は落ち着いてるように(?)見える*1が、決して解決したわけではない。そんな中、歌声合成文化も成熟しつつある現在、彼らの活動に対してどのような反応が生じるのか。非常に興味深い。

 このUTAUカテゴリ問題は、VOCALOIDという用語を考える上で重要なエッセンスを含んでいる。 「VOCALOID」という用語は最近「歌声合成文化」の通称として使われる傾向があるが、そろそろこのあたりの用法について整理したほうが良いのではなかろうか。とはいえ実際のところは、流石にVOCALOIDという用語自体を拡張的に用いるのは抵抗があるためか、やや言い換えた表現が主流ではある。例えば、デスおはぎ氏も指摘しているが、ニコニコ動画VOCALOIDカテゴリ専用ページでは「ボカロ音楽」という表現がとられた上で非VOCALOID楽曲も紹介されている。先日発売したボカロクリティークでは「ボカロ」「ボカロ文化」という表現を意識的に行っている印象があり、私もそれに倣った。

 新たな用語を考えようという動きもあるが広まらない。その原因としては

  • VOCALOID(文化)が指す対象が音楽文化だけではないから
  • VOCALOIDという用語があまりにウマすぎる表現だから
  • 広く浸透しすぎており今更VOCALOIDの方を汎化表現で言い換えるのも微妙だから

などが挙げられるだろうか。

 1つ目の理由はVOCALOIDという用語の多義性と関わる。詳しくは別の機会に確認したい。
 2つ目。この用語を考え出したYAMAHAに感心するしかない。この話題はid:ja_bra_af_cu氏とも少しリプライを飛ばしあったのだが、一応うまく当てはまる言葉はあるものの、VOCALOIDという語の絶妙さを超えるものは本当に思いつかない。無論、この呼称を元にして発展した文化だからというのもある。
 3つ目については、ニコニコ動画においては(所属)カテゴリタグはタグの一種だからということとも関わる。例えば、VOCALOIDと非VOCALOIDの文化を総称するカテゴリとして「歌声合成」というカテゴリタグが認められたとしよう。そうすると既存のVOCALOIDの動画全てに歌声合成タグをつけた上でロックする必要が出てくる。作業的にはプログラム的に解決出来なくもないが、それはフォークソノミーによるタグ付けというものの意義が失われてしまうのでやるべきではないと思う。
 このような状況を踏まえると、今更新たな表現を作為的に考えるより、VOCALOIDというカテゴリを拡張的に用いることを認めるほうが、まだ手っ取り早いし、自然に思える。

 しかしやはりVOCALOIDという語の用法を拡張してしまうには抵抗がある。それは主に混同に対する違和である。例えば、「重音テトさんはVOCALOIDでしょ?」といえば、違う*2。UTAU技術とVOCALOID技術の混同も強烈な違和感をもたらす。
 これは、WikipediaWikiと呼称されたり、USBメモリをUSBと呼称されることへの違和感と似ている。逆に言えば、WikiやUSBの用法が世間的に認められるのであればVOCALOIDにも同じ論法を適用可能であるとすることも出来る(暴論か)。

 ニコニコ動画の伝統的事情からVOCALOIDカテゴリが非VOCALOID由来の文化も含むことは認めたい。しかしそれはあくまで通称としてであり、厳密には区別すべきである*3。別の文脈でこれらの文化の総称を呼称する場合は、「ボカロ文化」とか「歌声合成文化」のような用語をあてるのが妥当。
 というあたりが現時点の私の落としどころだろうか。

 ちょっと書いているうちに思考が発散してきたので筆を置く*4。発散してる途中のものをブログ記事にするのも問題だが、無難になるようまとめてたらキリがないので投稿する。


*1:そう見えるだけで未だ議論は続いてるだろう。だからこそ今回のこの試みがある

*2:ちなみに重音テトさんはUTAU(or UTAUキャラ)という表現もこのような文脈では間違いである。このあたりの議論は別のエントリに回したいと思うが、敢えて言うならばテトさんは「VIPPALOID」とするのが妥当だと思っている。テトさんはこの界隈で一番ややこしい部類なので例としては適当ではないのだが、非VOCALOIDキャラでは一番有名なので仕方ない。

*3:区別することを強制する意図はない。必要がなければ(それで通じる状況であれば)区別しなくてもいいと思う。

*4:実際には筆などとっていないが、この表現のキーボード版は無いだろうか?

ボカクリVol.1 感想その2 - 今後の展望

 ボカクリVol.1 感想その1 - 総評 - 煩悩の反応学の続き。

 総評の次は個別に突っ込んだことを書こうと思っていたのですが、だいたいのところは
  『ボカロクリティークvol.01』 - logical cypher scape2
に良いことが沢山書かれているのでそちらにデリゲートします。もちろん、私もそれぞれの稿に刺激を受けて色々と考えもあるのですが、あまりガチでそれをやると私なりの感想という枠組みを超えてしまうので、別の機会に自分の論と絡めて取り上げられれば。

 ここでは前回の総評に加えて、ボカクリに対する様々な反応を見て思ったことから、今後の展望もとい期待について語ってみようかと思います。なお、本エントリの草稿執筆中に上記id:sakstyle(以下sakstyle)の記事が公開されたため、その影響を受けざるをえません。そのあたりは素直に引用を交えつつ。

今後の展望

 本誌は創刊号としての役割に徹しており、ボカロ批評界の今後を見据えた上での「コンセプト批評誌」となっているといえる。その意味での完成度は高いものの、ゆえに、全ては今後次第であったりする。

創刊号としての役割

 創刊は成った。総評でも触れたように、本誌では「創刊号」としてのコンセプトが編集に色濃く表れている。ボカロ批評の入り口となるべく、記事の流れは勿論、執筆者集めからレイアウトにまで努力が見られる。それは充分伝わってきた。巷の創刊号がどのような役割を目指すか良く知らないが、ボカクリはこの「入り口」という役割に拘る必要があったと思われる。
 そもそもボーマスで批評誌を出すということ自体、勇気のいることではなかっただろうか。本誌の前身であるVol.00*1は様々な批評誌ひしめき合う文学フリマ*2で販売されたため、テーマとしては新鮮ではあるものの、数ある批評の1つとして自然な立ち位置にあった。しかしボーマスは音楽が主体の同人イベントであり、批評という言葉に対して良くない印象を持つ人*3も多いと思われる。ボーマス参加との話を聞いたときは「おお、乗り込むのか!」という感想を抱いたことを憶えている。
 このような不安はあったものの、期待通りあるいは期待以上の反応があるのは見ての通りだ*4

必然的不足と必要な不足

 今回はボカロ批評の入り口という意図が重視され、書き手もその意図を組んだか、はたまた字数制限の影響か、各個テーマに対しての切り込み角が鈍角な印象を受ける。この類の指摘はいくつか見かけたが、例えばsakstyle氏はこう端的に表現した。

『ボカロクリティーク』なのにクリティークが始まっていない?!

『ボカロクリティークvol.01』 - logical cypher scape2

 どの論もテーマとしては非常に面白いものの、語り切れていない感があるということ。更に言えば「もっと強烈な主張をしているものがあってもいいのでは?」という思いは、確かにある。いくつかの論については意図的にサジェスチョンで留めていたりもする*5。これは前項で述べたような本誌を取り巻く状況から必然のものだろうと思う。しかし、取り扱う批評の多様性という観点から、数点くらいはもっと突っ込んだものがあってもいいだろうと考え方も出来る*6。掲載稿のうち半分は公募というから、創刊号というコンセプトに徹しすぎたことによる影響がリモートに作用したとも言えるだろうか?*7

 ただし、強烈な主張やガチでディープな論文をなるべく避けるという方針は、入り口としての役割を重視するならアリだ。結果としてそのようなまとまり方となった本誌は、これから広い層が手に取ることが期待される*8
 突っ込んだ内容の不足というのも「無いなら俺が書いてやる!」という書き手が表れることを期待できるという意味で、必要な不足とも言える。だって初めてのボカロ批評専門誌なのだから。

波及効果

 本誌は多くの示唆と多くの不足を含んだものとなっている。ボカロ批評の入り口的役割を追求した結果だろうが、目的は波及効果であり、今後ライトなものからヘヴィなものまで色んな批評が現れることを期待してのことだと思う。
 ここで恐ろしいのは、読み手に「そういう方向性の誌なのだ」という固定観念を持たれることだろう。誌の方向性だけならまだしも「ボカロ界隈の批評はこういう方向性しか受け入れられない」との判断が為されてはたまらない。そのような判断は早計に過ぎるとも思うが、万が一でもあれば、「ボカロ批評」としても「批評」という観点からしても、まったく本意ではない影響である。

今後の方向性

 ボカロ批評が広く盛り上がることが創刊号としての主たる狙いだとすれば、その影響がはっきり見えてくるのはいつだろうか。ボカクリ第2号への寄稿として現れるかもしれないし、その頃には別のボカロ批評誌が誕生しているかもしれない。いずれにせよ、ボカクリとしても次の号が非常に重要だということは確かだ。私は、これまで述べたような不足感、よりディープな議論や、今回触れられなかったテーマなどを回収するような方向性を期待している。

 最後に編集長の中村屋与太郎氏の思いをザ・インタビューズから引用してまとめたいと思う。

次回以降の人選の方向性はまだ決めかねているのですが、公募もまた行う予定です。
興味がございましたら、是非応募して下さい。

「言いたい事があるなら、ボカロクリティークに書きなよ!」と言って頂けるような、
公序良俗に反しない範囲で)自由な意見表明の場になれば良いな、と思っております。

http://theinterviews.jp/nakamuraya/437323

 批評誌であるがゆえにどちらかというとやや「濃い」場になっていきそうな予感はある(期待もしている)が、それも今後の匙加減次第だろう。
 批評に携わる人達から「もっと気軽に、自由に語り合おうよ!」との話をよく聞く。それは批評に関する負の先入観を取っ払いたいという主旨もあるだろうが、根本的な欲求でもある。ボカロ文化について、Webでは昔から様々な意見交換も見られるが、本誌のような批評誌も含め、より活発になって欲しい。ボカクリがその原動力となったら素敵だ。

*1:http://critique.fumikarecords.com/ にて少しずつ内容の公開が始まっている。

*2:文学系の同人誌即売会。批評とか文芸創作がたくさん。

*3:ついこの間まで私もそうだった。大抵が誤解に基づく印象ではあるのだが。

*4:ボカロクリティーク関連のツイートをまとめてみました - Togetterなど参照

*5:書き手の背景や執筆経緯による制約も。まぁこれはいつだってあるか。

*6:個人的に本誌の中で割と鋭く切り込んでいたと感じたのは、アンメルツPの07、isshy氏09、東葉ねむ氏の11、島袋八起氏の12だ。八起氏のものは小論も含めて。isshy氏の稿は「大分削った」との話を聞いたので、元々はもっと色濃かったものと思われる(削り方の方向性で大分変わった?)

*7:変な表現になってしまったが、書き手が無意識に空気を読んだことによる効果や、編集の意向がダイレクトに響いたという効果まで含む

*8:2011年9月10日現在、委託販売も始まっている VOCALO CRITIQUE Vol.01 - とらのあな